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2007年2月13日 (火)

§4 石積方式一般

4-1 石積みの基本理念

1 石積みの基本原則
石の積み方に三つの基本行為がある。「重ねる」,「合わせる」,「落とし込む」である。「重ねる」という行為はあらかじめ計画しておいた石壁を構築するために,単材(石積み用の単一の素材,粗割石など)を積み重ねていく行為であり,「合わせる」という行為は単材の奥行き方向の面を接触させて(合わせて)いく行為であり,石工用語で云うと「合端(あいば;単材の側面の接触部分)合わせ」という行為である。又「落とし込む」という行為は積み上げられた単材と単材との間の空間部に,別の単材を上から「はめ込む」という行為である。
もう少し具体的に石壁という構築物を想定した場合,「重ねる」という行為には基本的に,
① 横方向に高さの一定な層を構成する重ね方。例えば成層の「布積み」
② 全体的には層を構成するが,一部において層が乱れる重ね方。例えば準成層の「布状重ね積み」
③ 原則的に,鉛直方向において或る一定の幅内で,大・中・小の単材(間詰石も含めて)どうしが組み合わさって成層帯を構成するように,単材群を組み合わせた重ね方。即ち「帯状均し積み(成層帯積み)」
④ 層の形成には無関係に,単材の合端どうしが出来るだけ密着するように「落とし込み」をも伴った「合わせる」だけの重ね方。例えば「乱層乱重ね積み」

などの各行為がある。これらはこのまま後述する「石組み」の種類となる。
その昔,石積技法が秘伝であった時代,我が国特有の石工専門用語が出てくる。例えば「後藤家文書」なる文書の中の,後藤彦三郎著「新積地業准縄極秘抄(しんづみじぎょうみずなわごくひしょう),寛永10年(1633)」の中で,"山目打込み(やまめうちこみ)積み","鶴目(つるめ)積み",”三角積み","亀甲(きっこう)積み","四方伐合(しほうきりあわせ)積み","鏡積み","野面(のずら)積み"などの積み方と,"本伐(きり)合せ","中伐合せ","半伐合せ","面伐合せ","金場取残し(かねばとりのこし)","布築(ぬのづき)伐合せ","半鶴半伐合せ"などの加工石材の接(は)ぎ方(つなぎかた)を紹介している(文献1)。この技法が見られる身近な場所といえば金沢城である。

文献1:石垣普請(北垣総一郎著,法政大学出版局,昭和62年)

これらは主として城郭を対象とした江戸時代の石積み専門用語であり,石工の世界の直感的な分類であるが,職人すぎていて,現代人にとっては何が何なのかさっぱりなじめないであろう。これらの名称は現代でも広く用いられているものもあるが,後で城郭等の石垣についてその石積方式を説明する時に取り上げることにする。
種々の環境整備等に用いる石積工法の呼び方は分かり易く,必ずしも伝統的な呼び方にとらわれない分類であってよい。この基礎となるものとして「ジグソーパズル」の要素形状に着目することにしよう。「世界大百科事典,平凡社,1955年」によると,"ジグソーパズル(Jigsaw Puzzle)"という遊びがあって,これは小さなピース(断片)に分割されている一つの絵をばらばらにし,それを元通りに組み直す遊び(知育的玩具)であると解説してある。

     Jigsaw12s
      写真 4-1(Google Web Amanjackより)

上の写真などは簡単な例であるが,この遊びはイギリスのジョン・スピルズベリーという地図の印刷人(製図家ともいわれる)が,1760年代に作ったのが最初だという。元は地球の学習用に考案されたもので,地図をばらばらにしたところから,切断された地図(Dissected Maps;解体パズル)と呼ばれていた。
初期のものは木製で,ピースを一つずつ刻んで作ってあったために高価であったが,19世紀の終わりに型抜きの機械が発明されて安価に量産されるようになって普及した。"ジグソーパズル"
と名づけられたのは20世紀初めに,ジグソー(Jigsaw;糸のこぎり)が発明されてから後のことである。日本では"はめ絵"と訳されることが多かった。
組み立てるコツは,絵の明瞭な部分と一番外側の部分のピースが分かり易いのでそこから組んでいくことである。そのため,マニア向きのものには絵のないものや外側が四角でなく円形のものもある。
日本にはアメリカから輸入され,昭和49年(1974),東京上野の国立博物館での「モナリザ」展の開催を機にモナリザのジグソーパズル熱が盛んになり,成人層にも愛好された。現在材料は原紙が主として使われ,絵柄には名画,各地の名所,観光風景など多くの種類があり,ピースも500個内外の初心者向きから,4000個に及ぶ複雑なものまである。なお江戸時代中期に知恵の板という和製玩具が登場し,角・円形などの板を集め,色々な形に組み立てる子供の遊びがあった。
ところで余談ではあるが幾何学の持つ図形の性質でものすごく興味の深いものがある。それは正四面体のもつ性質で,先日,NHK高校講座"数学基礎"の中の第19回「芸術と数学,講師は秋山仁氏」である。即ち,"正四面体の頂点を通るように自由に曲線で切り開いて(展開して)出来た平面図形は,同じ形で隙間無くタイルのように敷き詰める(タイル張り)ことが出来るということである。ここで,秋山先生の用いられた図形の一部を借用して載せてみると(文献2)

文献2:NHK高校講座"数学基礎"の中の第19回「芸術と数学,講師は秋山仁氏」(Google Web NHK
高校講座より)


1920
        写真 4-2-1

1921
写真 4-2-2

1922
写真 4-2-3

即ち,写真4-2-1 のような正四面体に5枚の色紙を重ねて,上記の規則に従って任意の図形を切ると,写真4-2-2 のように色々の同一形状の展開図形が得られる。これらの展開図形をうまくタイル張り出来るように敷き詰めた結果が写真4-2-3である。こうした敷き詰めは他の多面体では不可能なのだそうだ。
先に説明したジグソーパズルは,一枚の絵を任意の数の,任意の形状のピースに分割しておき,これらを組み合わせて元の一枚の絵に戻すパズルであったが,この正四面体の幾何学は,一定の規則のもとに成り立つ性質であってパズルをする人が行為をするのは,展開図形をつくるだけである。しかしながら両者共結果として各ピースが組み合わさって最後は一枚の平面図形が出来上がるということである。
理想的な石組みとは,連続した壁をつくるように,丁度ジグソーパズルの絵要素を組み合わせて元通りに組み直すのと同様の技法に外ならない。その絵要素が石の単材になっただけのことで,石材の場合には,ジグソーパズルの絵要素のような曲線性はないから,石要素の形状は直線的であってもっと簡単なはずであるが,石材の物理的性質によって石採り場から切り採られる単材は必ずしも切り採りたい形状通りにはいかず,必ず欠ける部分が出てくるから,現場における単材の組み合わせを,切り採る前の石採り場の原形に再現することは事実上難しく,それだけに技術のいる仕事となる。


      

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